2022/10/03 12:10
ここしばらくAdoのひとり勝ちと言っても良い状況が続いている各種チャートだが、その上位を脅かしそうなニューカマーの楽曲がじわじわと順位を上げている。2022年9月28日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で、10位を記録したなとりの「Overdose」がその一曲だ。この曲は前週の9月21日公開分のHot 100で26位で初登場し、2週目にしてトップ10入りとなった(【表1】)。
なとりは昨年5月から音楽活動を始めたばかりという19歳のシンガーソングライターだ。ただ、顔出しもしておらず、詳しいプロフィールを公開しているわけでもないので、それ以上の情報はほとんどない。さらにいえば、各種音楽サービスで配信されているのは、この「Overdose」一曲のみという状況なので、いわば全くの無名新人のデビュー曲が、いきなりチャートのトップ10に飛び込んできたといってもいいだろう。
しかし、彼の主な活動の場であるTikTokを覗いてみると、その様相は一変する。「作曲1ヶ月目の私が作りました。」というコメントとともに公開された「ターミナル」という楽曲を皮切りに、数十秒の短い楽曲が多数公開されているのだ。なかでも初期に発表した「猿芝居」という楽曲が18万以上もの「いいね」がついていて、同じくTikTok上でカヴァー動画などがアップされている。もちろん「Overdose」も9月7日にTikTokで公開されており、こちらはすでに20万近くの「いいね」がついている。いわば、TikTok上ではすでにスターまではいかなくとも確実にポジションを作っているのである。
ただ、TikTokでバズったとしても、直接Billboard Japanのチャートには反映されない。あくまでもTikTokはきっかけのひとつでしかなく、そこから配信など他のフォーマットでのヒットにつなげていくことが重要だ。そういった意味において「Overdose」は、TikTokからストリーミング配信へと導線をつなげられたことによってチャートインできた好例である。すでにLINE MUSICでは1位を獲得しているし、その他のストリーミングサービスでも上位に入り込んでいる。この流れをうまく作れたことが勝因といってもいいだろう。
無名の新人だからとか、まだ曲が少ないとか、以前はハンディといわれていたことをものともせず、一気にヒットになるケースがここ数年増えてきた。様々なケースがある中で、TikTokを媒介にした場合のわかりやすいお手本が「Overdose」といえるだろう。なんでもかんでも「TikTokからヒットを」というレコード会社の戦略には疑問を感じることもあるが、なとりのような新しい才能が注目されること自体は大いに歓迎したい。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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